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1930’s Royal Winton “Ivory”9467
ロイヤル・ウィントン
「アイヴォリー 9467」
デビュー作「マーガレット」姉妹編
縦に展開する手描きの野草群
アースウェアに貫入。骨董的美しさ
太線の濃い花が縦に並ぶ
短い操業だが英陶の歴史に残る
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創業は1900年で、1964年には生産を終えた短い歴史の「ロイヤル・ウィントン」(Royal Winton)。1930年代にチンツ・デザインの「マーガレット」(Marguerite)を世に出して以来、チンツ・デザインのカップやウェアを連発してチンツの専門窯の如く英陶に特別な地位を占めてきました。
このトリオは「アイヴォリー」(Ivory)という名が付いていますが、ほぼ、デビュー作の「マーガレット」と見分けが付かないデザイン。復刻版というわけではなく、「マーガレット」と同時期に作られた双子の姉妹的カップ。出品者は「マーガレット」「アイヴォリー」の順でここに出品してきましたが、その頃は姉妹編だとは思いつつ、「何で」と不安なところもあった。
しかし今回のトリオのカップ裏にはIVORYの名前の下に小さめにMARGUERITEがしっかり印字されていました。やはり同時期の姉妹編。多分このデビュー作は大変な評判となり、同じデザインのカップでシェイプ違いを作る際に、別名を立てたのであろう。
売れて売れて、直ぐには第2、第3作に取り掛かれなかったのではないか。黒地のチンツ「クロッカス」など強烈な後釜も続々でしたが、やはり最初の「マーガレット」「アイヴォリー」の印象が強く、また花の色のバランスも良くて、個性が強い同社のチンツ一族の中でも最も方範囲に受け入れやすいタイプであったのではないでしょうか。
英陶の骨董品はいい物はめっきり少なくなって、大幅に値上がり中。シェリー、ウェッジウッド、ロイヤル・ドルトン、ロイヤル・ウースターなど大メーカも流石に市場に品数が少なくなってきた。ロイヤル・ウィントンは比較的小さな窯で、しかも人気のチンツは作られた期間も短いところから、昔から高めではありました。少なくなるのが早いので、今後は価格急騰の恐れも。
先ごろやや地味ながらアール・デコ期より少し前の、ロイヤル・ドルトンのチンツを見つけ、出品しました。英陶の何処が「チンツ一番乗り」かということになると、一般にはウィントンと思われがちですが、どうやら「何でも描く」ドルトンではないかと出品者は考えている。ドルトンのチンツが後追いであるとすると、地味に過ぎる。ウィントンの「マーガレット」に刺激されたのなら、ドルトンと雖もあんなに地味に後追いするとは考えられない。
トップは何処にせよ、アースウェアにこってり手描きというウィントンのチンツが、英陶全体にチンツ・ブームを呼んだのは間違いないところ。一番目立つのはシェリーのチンツですが、クラウン・スタッフォードシャーのように、チンツとは言わず実際はチンツのカップをたくさん作っているところもある。どこの窯にも必ず、「チンツ」はあるという状態。
英陶にはいろんな意味での共通の英国風というものが見えるのですが、「チンツ」の分野は正に英陶の独壇場。そういう意味では、ウィントンの功績は誠に大きいということになる。
数は少ないですが、ウィントンにも「普通の」花のカップはあって、こちらもなかなか魅力がある。景色の中の野草というところは同社のチンツに通じる面がある。チンツ以外もアースウェアならではの味わいで、アースウェア+手描きという効果面をよく計算した佳作が多いから、ウィントンの「チンツ以外」も大いにお薦めです。
「マーガレット」(Marguerite)というパターンのデザインは、創業者Leonardの妻が針仕事で作ったクッションの模様を後にデザイン化したとの言い伝えがあります。1950年代まで作られたウィントンの数多いチンツ模様の中で、最も由緒ある代表格パターンとされます。
「チンツ」という言葉はインド語の「chint」に由来し、「幅広く明るく印刷された布地」を意味します。 この用語は、植民地時代のインドの英国から輸出されたプリント生地から来ています。
ディナーウェアの世界では、 チンツは陶磁器の食器の全体の表面が大胆で複雑な花模様で覆われていることを言います。ロイヤル・ウィントンは手描きからチンツ・デザインを始め、1950年代にはリソグラフを介して複雑な模様を描く手法、技術を独自に開発します。チンツのディナーウェアを大衆向けに、経済的に生産するプロセスを開発した意味でのリーダーであるわけです。
ロイヤル・ウィントンンは所謂商標で、会社名はGrimwades Ltdといい、1900年に創業、1964年まで生産を続けています。あまり長い歴史ではありませんが、創業から間もない1913年に、創業者グライウォードがキングジョージ5世とクイーンメアリーを訪問した後、栄誉あるタイトル「ロイヤル」が与えられていますから、「出世」は非常に早かったわけです。
ロイヤル・ウィントン自体の名は1964年で消えますが、その後Henry Pottery、Ltdがここを買収。しかし1950年代後半にはウィントンのリソグラフの技術をもってしてもチンツの生産性は悪く、生産は終了します。
その後1993年、Spencer Hammer and AssociatesがRoyal Wintonを買収。 同社はGrimwades Limitedの名称を復活させ、Royal Wintonとしての伝統を継続させようとしました。現在のウィントンがどうなったか。調べなければなりません。
最後になりましたが、このトリオのカップはレアな縦型。縦長に描かれるチンツの野草と極めてマッチングのいいシェイプです。
カップ内部に僅か、表面に貫入が多く見られます。
久しぶりに貫入の説明。カップを窯で焼いた後、冷ます際の温度差で表面の透明の釉が細かく割れる現象を言います。アースウェアの場合、貫入はあって当たり前というくらい多く発生します。ボーンチャイナでは発生しにくく、英陶を挙げてボーンチャイナに移行した理由の一つはこの貫入対策です。ただ、1930年も過ぎると、アースウェアであっても勧誘は少なくなっていくのですが、ウィントンの場合、たっぷり塗った顔料を保護するため、かなり厚く釉を施したためにそれが割れやすくなった。
出品者はこうした貫入に慣れない方々に向け、「手を出さないよう」ご注意申し上げてきましたがしかし、今は大胆にも「骨董品がお好きという方なら、ぜひ貫入もその味わいの一つとお考え下さい」と、貫入ある骨董をもお薦めする心境。貫入あればこそという 「骨董の味」もあるわけです。
若い方。ちょっと冒険されては如何か。(責任は持てませんが)
このトリオのサイズは次の通り。
カップの高さ7cm、口径7.8cm。ソーサーの直径は14.5cm。スクエアなサイドプレートは縦横14.7cm。
ほかにもたくさん出品しています。ぜひご覧ください。
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No.108.001.003
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